Dunkirk

ブラックアウト/オールクリアを読んでいた私としては見ておかないといけないかと。

 

すごかった。映像の力はすごい。

戦争の体験がない私が活字から浮き上がらせる想像だけでは補えない何かを、実際に息をしている多くの俳優さんが教えてくれました。

目線が等身大の人で、それも名も無き人たちで、好んでフランスの地を踏んだわけでもなく、一瞬の判断と偶然とで生死が分かれてしまう状況に置かれて、帰りたい一心で。

本当に戦争は駄目だと実感できました。ただ、今行われている戦争とはだいぶ異なることは確かだと思いますが。

 

字幕でも全く問題ないです、なぜならほとんどの俳優が話さないから。

あの場で声を発することにどれだけの意味があるのかと。目立たず騒がず、体力は温存し、視線で意思を通わせること。声を発した途端に暴徒となりかねない個々の緊迫感に圧倒されました。

職務を全うできる人はまだ、自分の意思を実際の行動として体現できたのでしょうが、戦場で数として表現される人たちにとってはもう地獄でしかないです。

 

100分de名著でハンナ・アーレントを特集していて、私がちょうど興味を持って、かつ以前友人に進められていた「夜と霧」をとうとう買い、読み終わった後で。

私はこの映画を見たことで、戦争について、もう少し想像力を深く働かせることができると思います。

 

誰も他人を虐げずに暮らしていける世の中であればと思いますが、「関ヶ原」のように最後の一瞬の誰かの判断まで未来はわからないし、「夜と霧」の筆者の言うとおり置かれた環境に良くも悪くも適応するのが人間です。

人は不確かです。私が今日こんなことを考えてそれを書くなんてことは、昨日の私には想像もつかなかった。「夜と霧」ではなく「Dunkirk」で泣きました。現代人だと痛感します。

これから「人間の条件」を読みたいと思います。学び続けるしかない。言葉を鵜呑みにしてはいけない、そして見くびってはいけない。人よりも長く存在でき、作られた瞬間から解釈は受け取る側に委ねられるが故に、言葉こそ強力だ。